サービス残業は犯罪です!
労働基準法では、労働者に時間外・休日労働をさせたときは、割増賃金を支払うことが定められています。
これに違反して割増賃金を支払わなかったときは、その割増賃金、
さらには裁判所が命ずるときは同一額の付加金の支払い義務が生ずることになります(つまり2倍の支払い)。
もちろんこれ以外に懲役・罰金刑も課されることもあります。
さらに労働基準監督署も、過労死を出した会社や悪質なサービス残業の会社に対しては、送検することも多くなってきています。
今、事業主には、改めて法令を遵守する「コンプライアンス」が求められています。
「サービス残業やむなし」という意識を改革し、労働時間の適正な管理と、
不必要な時間外労働をさせない、ということを徹底し、法律やルールにのっとった労働時間管理を行うようにしましょう。
サービス残業のタイプとその解決策
1.自己申告を規制する
自己申告制において、正しい時間を申告しにくい雰囲気があるなどの要因から、サービス残業が発生する。
【解決策】
正しい自己申告ができる職場の雰囲気づくりに心がけます。社員教育で労働時間の適正申告を徹底させると良いでしょう。
2.上限を設定する
月の残業時間の上限を決めて、上限を超えた残業時間については割増賃金を支払わない。
【解決策】
残業額に上限を設定した場合でも、実際の残業時間がそれを超えてしまったらきちんと残業代を支払います。
恒常的にオーバーするようであれば、人員配置の見直しや仕事内容の検討などを総合的に行いましょう。
3.定額払いにする
毎月定額の割増賃金を支払うが、それに相当する残業時間を超えて働いてもそれ以上は支払わない。
【解決策】
2と同じ
4.振り替え休日が未消化
振り替えられた休日に出勤をさせ、実質的には休日を与えていないのに休日出勤の割増賃金を払わない。
【解決策】
振替休日はきちんと取得させなければ割増賃金の発生を免れません(取得させても割増賃金が必要な場合があります)。
そもそも取得しきれない振替休日に問題があるので、業務や人員配置の見直しが必要です。
5.下限を設定する
1日や1ヶ月に一定時間以上残業した場合に限り割増賃金を支払う。
【解決策】
残業代を支払わないことは労働基準法違反です。制度を改める必要があります。
6.年俸制に組み込む
年俸に割増賃金が含まれているとして支払わない、または制度上割増賃金を年俸に含んでいるが、その額を超えても差額を支払わない。
【解決策】
年俸制であっても割増賃金の支払いは免れません。場合によっては制度の見直しも必要かもしれません。
7.法に不適合
所定の手続きを踏まずに、変形労働時間制を導入したり、割増賃金の算定基礎から除外できない賃金・手当てを除外して計算する。
【解決策】
変形労働時間制や、みなし労働時間制は、法律で定められた所定の手続きを経て初めて有効になります。
制度を正しく認識して、適切な手続きを行ってください。
8.管理・監督者の残業
管理職になると同時に、小額の役職手当と引き換えに残業手当が支給されなくなる。
【解決策】
そもそも管理監督者とは、「経営者と一体的立場」にあり、「自己の勤務時間について自由裁量を有する」者とされています。
この要件に該当しない管理職については、残業手当を支給する必要があります。
また、深夜の割増賃金は支払いを免れません。
9.外勤営業担当者の残業
外勤の営業担当者などは、営業手当てがつく代わりに残業手当が支給されない。
【解決策】
外勤営業担当者の事業場外労働については、「労働時間を算定しがたい」場合に限られており、
携帯電話などで上司と連絡をとりながら活動するような場合には、本来適用されません。
また、一日の仕事量が所定労働時間内で終わるものなのかどうかのチェックも必要です。
具体的な解消方法
1.労使の意識改革
なにより重要なのは、労使双方が労働時間に対する考え方を改めることです。
《使用者の意識改革》
働いた分はきちんと支払うことを心がけます。
サービス残業は社員の士気を損ねます。
労働時間を正確に把握することに努めます。
タイムカードで正確な時間を打刻したことを理由に、社員を不利益に取り扱ってはなりません。
適正な人員配置を行い、労働時間の短縮に努めます。
新規に労働者を雇い入れたり、アウトソーシングすることも効果的です。
《労働者の意識改革》
効率的な仕事を心がけ、社内にいつまでも残っていないようにします。
働いた時間を正直に申告するように心がけます。
《管理職教育》
労働時間の適正管理の必要性の認識、部下への支持方法・説明の方法を指導、業務効率化の徹底の重要性を認識、などの教育を行います。
各個人の仕事を洗い直し、偏りがあればこれを改善し、効率化を検討します。
2.システムの整備と労働時間管理
適正に労働時間を管理するためにシステムの整備をします。
ただし、自己申告制はやむをえない場合の例外的なケースです。
《タイムカードなど、客観的な記録を基礎として確認する場合》
労働実態にあった記録となるよう、タイムレコーダーは職場の近くに設置します。
必ず本人が打刻をしなければなりませんが、いったん本人が打刻して、その後さらに仕事を続けたりすることが無いように心がけます。
就業時間後に定期的に見回りを行うと良いでしょう。
残業指示書や報告書、業務日報など、タイムカード以外の記録があれば、それと併せて確認します。
《使用者の現認により労働時間を確認する場合》
上司は正確な始業・終業時刻を記録することを心がけます。
労働者が始業・終業時刻の記録を定期的に確認するようにします。
使用者が出張などで現認できない場合の記録方法をきちんと決めておく必要があります。
《やむを得ず自己申告制をとる場合》
正確な労働時間を申告させるように、労働者・上司共に意識を変える必要があります。
残業時間の上限を定めているような場合はそれを撤廃します。
労働者はどのような形で申告すれば良いのか、事前によく説明しておきます。
定期的に実態調査を行います。
サービス残業解消への取組み
まず第一歩は、経営トップの「サービス残業を解消しよう」という意思表明です。
管理部門の担当者がサービス残業の実態、実際の労働時間、退社時刻などを調査したり、
管理職・従業員にヒアリングを行ったりします。
労使双方の取り決めなどをしたら、それを掲示板に大きく貼り出したり、社内報に記載するなどします。
タイムカードやICカードによる方法、使用者自ら現認するなど、できる限り客観的に管理できるような方法をとります。
事業場が複数あるような場合は、各事業場ごとの労働時間管理の責任者を決めておきます。
相談窓口を設置することで、サービス残業の実態を積極的に把握します。
その際には、上司や人事労務担当者以外の者を相談窓口としたほうが良いでしょう。