改正労働安全衛生法が2026年4月に施行され、「高年齢労働者の労働災害防止」と「個人事業主等(いわゆる一人親方・フリーランス)に対する安全確保措置」が強化されます。いずれも“形式的対応”ではなく、具体的リスク低減措置が求められる点が特徴です。
1.高年齢労働者(主に65歳以上)への労災防止対策の強化
少子高齢化の進行により、高年齢労働者の就業は常態化しています。特に増加しているのが「転倒災害」「腰痛等の動作起因災害」です。改正の趣旨は、年齢特性を踏まえた安全配慮を明確に企業責任として位置づける点にあります。実務上求められるポイントは以下の通りです。
・年齢特性を考慮したリスクアセスメントの実施
・作業内容・配置の見直し(重量物取扱い、長時間立位作業など)
・手すり設置、段差解消、滑り止め等の設備改善
・体力・健康状態を踏まえた就労管理
・再雇用者も含めた安全衛生教育の実施
単に「注意するよう指導した」という対応では足りず、設備面・作業方法面での具体的改善が重要です。監督署対応では、「高齢者がいることを前提にリスク評価を行っているか」が確認ポイントになります。
2.個人事業主等に対する安全確保措置の明確化
近年の改正により、労働者だけでなく、同じ作業現場で働く個人事業主等に対しても安全確保措置を講ずる必要性が強化されています。建設業や製造業など、混在作業現場では特に重要です。主な対応内容は以下の通りです。
・危険情報の提供義務
・危険箇所への立入制限措置
・保護具の使用に関する周知
・作業手順・リスク情報の共有
・混在作業時の連絡体制整備
「雇用していないから関係ない」という整理はできません。元請企業や作業場を管理する事業者には、現場全体の安全配慮義務が及びます。
今回の改正は、新しい制度創設というよりも、安全配慮義務の射程を広げ、実効性を高める改定です。特に注意すべき点は以下の通りです。
・高年齢者を前提とした安全設計ができているか
・個人事業主を含めた現場リスク管理体制が整備されているか
・安全衛生委員会で具体的議論がなされているか
・改善履歴を記録として残しているか
今回の改定の本質は、「誰が雇用関係にあるか」ではなく、「同じ現場で働く人の安全をどう確保するか」という視点への転換です。高年齢労働者の増加と働き方の多様化を前提に、安全管理を“人に合わせる”設計へ進化させることが、今後の企業の重要課題となります。