1. MIRAIGA通信
 

MIRAIGA通信

2025/12/23

近年、「失業保険の受給額や受給期間を増やせる」などとうたう申請サポートサービスをめぐり、消費者トラブルが増加しています。東京労働局および国民生活センターは、SNS広告やインターネットを通じた勧誘に注意するよう呼びかけています。これらのサービスの中には、高額な費用を請求するものや、不正受給につながるおそれのある事例も確認されており、利用にあたっては慎重な判断が求められます。


国民生活センターによると、全国の消費生活センター等には、失業保険の申請サポートに関する相談が数多く寄せられています。例えば、「給付額が増えると説明されて契約したものの、実際には増額されず、高額な手数料だけを請求された」「契約後すぐに解約を申し出たところ、多額の違約金を請求された」といった事例があります。


また、特に問題視されているのが、不正受給につながりかねない助言を受けたケースです。SNS広告をきっかけに契約した事業者から、「医師の診断を受ければ受給期間が延びる」などと説明され、事実と異なる申告を勧められたという相談も報告されています。不正受給と判断された場合、給付金の返還に加え、延滞金や刑事罰の対象となる可能性があり、利用者本人に大きな不利益が生じます。


これらの申請サポート業者は、「誰でも簡単に受給額が増える」「手続きを任せれば安心」といった誇張した表現で利用を促す傾向があります。しかし、実際の受給額や受給期間は、就労状況や退職理由などをもとに、行政機関が審査して決定するものであり、民間事業者が結果を保証することはできません。


さらに、報酬を得て雇用保険の申請書類を作成・提出する業務は、社会保険労務士や弁護士など、法律で定められた資格を有する者に限られています。資格のない業者が実質的な申請代行や不適切な指示を行うことは、法令違反となるおそれがあります。


東京労働局および国民生活センターは、次の点に注意するよう呼びかけています。

第一に、「必ず給付が増える」「高額受給が確実」といった宣伝文句を安易に信じないことです。給付内容は個別の審査によって決まるため、確約されるものではありません。

第二に、契約前にはサービス内容、料金、解約条件を十分に確認し、書面で内容を残すことが重要です。

第三に、申請手続きに不安がある場合は、無料で相談できるハローワークを活用することが有効です。


失業保険の申請サポートをめぐるトラブルは、制度への不安や知識不足につけ込む形で発生しています。公的制度の手続きは原則として公的機関で行うことができ、必ずしも民間の有料サービスを利用する必要はありません。正確な情報を確認し、冷静に判断することが、トラブルを防ぐために重要です。


【国民生活センター「失業保険の給付額等を増やすことができるとうたう申請サポートに注意 ─不正受給を促すかのようなケースも!─」】

https://www.kokusen.go.jp/pdf/n-20251203_1.pdf

【東京労働局「「失業保険の金額・期間を増やせる」とうたう申請サポートにご注意ください。」】

https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/newpage_01662.html





2025/12/15

労働基準法第15条では会社側に解雇権が認められていますが、労働契約法第16条にに「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして無効とする」と記載されております。不当解雇で争われた場合、解雇権の濫用として解雇無効となるケースが非常に多いですが、解雇無効の判決後はどのようになることが多いのでしょうか。


労働問題を専門とする日本労働弁護団、経営法曹会議ほか、労働問題に詳しい弁護士を対象に行われた調査の結果、次のようなことが明らかになったそうです(https://www.jil.go.jp/institute/research/2024/244.html


解雇・雇止め訴訟の判決において解雇等が無効とされた場合の復職割合は次のようになっています。

・復職した 37.4%(うち復職後継続就業 30.3%、復職後不本意退職 7.1%)

・復職せず 54.5%

・不明 8.1%

復職しなかった理由としては、復職後の人間関係に懸念があるとした人の割合が38.9%と最多でした。また、復職後に不本意退職となった労働者の退職理由では、「使用者からの嫌がらせ」(16.2%)が最多でした。


一方、判決で終局した事案で、判決までの過程で裁判所から示された和解案を拒絶したのは86.5%に上っており、その内訳は次のようになっています。

・労働者側が拒絶 45.0%

・使用者側が拒絶 21.3%

・労使双方が拒絶 33.8%

労働者側の拒絶理由は、「合意退職の和解案だったが、労働者が復職を希望」(34.7%)、「合意退職の和解案だったが、解決金額が低かった」(30.6%)、「合意退職の和解案だったが、解雇無効を確信」(22.3%)となっています。

また、使用者側の拒絶理由は、「合意退職の和解案だったが、使用者が金銭支払を希望せず」(19.4%)、「地位確認の和解案だったが、使用者が復職を希望せず」(15.3%)、「合意退職の和解案だったが、解決金額が高かった」(13.9%)となっています。


現在、厚生労働省の労働政策審議会では解雇無効時の金銭救済制度に関する議論が以前から行われていますが、少し停滞気味のようです。解雇・雇止めには金銭的な問題だけではないという一面もあり、なかなか結論は出ないようです。



2025/12/15

顧客が企業やその従業員に対して行う不当な要求や迷惑行為(カスハラ)は、業務への支障はもちろん、従業員のパフォーマンスや健康状態等にも影響するため、対策が必要です。

労災認定基準にもカスハラに関する項目が明記され、法的な状況も変わりつつあります。

業種によっては労働者不足が著しく、カスハラを受けた従業員の被害をそのままにしている職場では、離職が起こりやすくなり、サービスの提供に影響を及ぼす可能性があります。


カスハラに関する具体的な該当行為として、①長時間拘束型、②リピート型、③暴言型、④暴力型、⑤威嚇・脅迫型、⑥権威型、⑦店舗外拘束型、⑧SNS/インターネット上での誹謗中傷型、⑨セクシュアルハラスメント型の9つが挙げられており、それぞれ、「該当行為例」「判断基準例」「対応方針・対応例」「該当する可能性のある刑法犯」について示されています。

例えば、長時間拘束型については、「居座り、長時間の電話など、顧客が正当な理由なく長時間従業員を拘束する」(該当行為例)、「商品・サービスに問題がない場合、約30分を目途に判断する」など(判断基準例)、「上位者に代わる(電話応対時、来店時)」など(対応方針・対応例)、「監禁罪刑法220条(3年以上7年以下の懲役)・一定の場所から移動の自由を奪う行為」など(該当する可能性のある刑法犯)としています。


従業員を守るという観点も含めて対策を講じなければいけませんが、カスハラかどうかの判断は極めて難しいのが実情です。企業としては「受け入れられない行為」について具体的な基準を設けておくと良いでしょう。

カスハラ行為を想定した事前準備として、事業主の基本方針・基本姿勢の明確化→従業員への周知・啓発→従業員(被害者)のための相談対応体制の整備→対応方法、手順の策定→社内対応ルールの従業員等への教育・研修を行う、としています。

また、ハラスメント行為が実際に起こった際の対応として、事実関係の正確な確認と事案への対応→従業員への配慮の措置→再発防止のための取組み→前記までの措置と併せて、プライバシー保護や不利益取扱いされないことなどの措置を講じる、としています。


厚生労働省・あかるい職場応援団では、「職場におけるハラスメント対策」の取り組みについて公開しているので参考にしてみてください。

https://www.no-harassment.mhlw.go.jp/pdf/kensyu_2023/3_custmer_hara.pdf


2025/12/12

近年、退職代行サービスの利用が増加しており、企業においても適切な対応が求められています。退職代行には民間業者(退職代行会社)、弁護士、合同労組があり、今回は退職代行会社への対応について解説します。


まず、退職代行会社は法的な代理権を持っておらず、従業員の意思を「伝えるだけ」の使者に過ぎません。したがって、企業としては最初に、連絡をしてきた人物の氏名や所属を正確に確認し、従業員本人からの正式な依頼によるものであることを証明する資料の提示を求めることが重要です。資料の提示がない場合には、個人情報を不用意に提供せず、従業員本人に連絡を取って確認を取るようにしましょう。


次に、退職代行会社から退職の意思が伝えられた場合には、従業員本人名義の退職届の提出を依頼するのが良いでしょう。退職届は法律上定められた書式があるわけではないため、会社所定の形式でなくとも、本人の署名があるものであれば受理して差し支えありません。また、退職届が提出されない場合でも、口頭やメールで退職の意思が明確であれば、民法上はその意思表示から2週間後に退職の効力が発生します。そのため、退職届の受理承認書を交付し、退職意思の受領を証拠として残すことが望ましいです。


さらに、業務の引継ぎや貸与物の返却、私物の回収といった実務対応も重要です。退職代行会社を通じて返却物や引取り方法について明確に伝え、事前に訪問日時を調整しておくことでトラブルを防止できます。深夜や休日に無断で訪問されることがないよう、来社時には事前連絡を必須とする旨を伝えることも有効です。


また、退職日までの有給休暇の取得についても配慮が必要です。従業員から全日程の有給休暇取得の申請があった場合、会社としては原則としてこれを認める方向で対応必要があります。ただし、業務上の必要性が高く、引継ぎがどうしても必要な場合には、休日出勤を命じるという選択肢も考えられます。休日に有給休暇を取得することはできないため、合理的な業務命令として出勤を求めることが可能です。この場合、退職代行会社に対しては「休日出勤命令は業務命令であり、退職手続きとは別のものなので、会社が直接連絡を取る」と伝えておくとよいでしょう。


退職に必要な書類(離職票、源泉徴収票など)は、原則として本人宛に直接送付するか、本人の同意がある場合に限り退職代行会社を通じて送ることになります。個人情報保護の観点からも、慎重な対応が求められます。


最後に、退職代行会社とは交渉権限がないため、退職条件の変更や残業代の請求など、法的交渉が必要な場面では対応ができません。こうした交渉が発生した場合には、本人やその代理人である弁護士と直接交渉する必要があります。


2025/12/10

近年、いわゆる「スポットワーク」(短時間・単発の就労)が、雇用仲介アプリなどを通じて広く普及し、労働者および企業の双方にとって利便性が高まっています。今回は使用者(事業主)側が気を付けるべき注意点についてまとめておきます。


1.労働契約締結時の注意点

「誰と誰が労働契約を締結するか」を明確にする必要があります。仲介アプリを通じたマッチングであっても、スポットワーカーとあなたの会社との間で直接「雇用契約」が成立します。契約成立の時期については、アプリで求人に応募しマッチングが成立した場合、面接などを経なくても「応募した時点で労使の合意があった」とみなされ、雇用契約が成立するのが一般的です。

労働条件(就業場所、仕事内容、労働時間、賃金、雇用形態など)は、書面(または同等の明示方法)で明示することが必要です。法令どおり、契約内容をあらかじめ明らかにする必要があります。


2.休業・キャンセル時の対応

たとえスポットワークであっても、契約成立後に事業主の都合で「仕事の中止」「勤務日のキャンセル」「早上がり」を命じた場合、これは原則として「使用者の責に帰すべき休業」に該当し、休業手当を支払う必要があります。

特に、直前でのキャンセルは、労働者にとって再び別の就労先を探す余裕がない可能性もあるため、不当な契約解除とみなされるおそれがあります。よって、キャンセルの可能性やその期限をあらかじめ示す場合でも、慎重に対応すべきでしょう。


3.賃金および労働時間の管理

業務に必要な「準備時間」(制服への着替え、業務前準備など)や「後片付け時間」なども、労働時間に含まれる可能性があります。したがって、これらを含めた実労働時間を正しく把握し、適切に賃金を支払う必要があります。

予定された労働時間と実際の労働時間が異なる場合には、予定どおりの賃金は遅滞なく支払い、差異が生じた分は適切に精算しなければなりません。

また、一方的な賃金の減額や不当な扱いは、法令違反となる恐れがあるため、労働条件の変更には労使双方の合意が必要です。


4.労災・安全管理・ハラスメントへの配慮

スポットワーカーであっても、通勤途中や勤務中の事故は原則として労災保険の対象になります。事業主として、安全管理や労災対策を講じる義務があります。

また、職場でのハラスメント対策(パワハラ、セクハラ、マタハラなど)についても、通常の雇用者と同様に配慮しなければなりません。


単発・短時間の「スポットワーク」であっても、契約成立時点で法令(労働基準法など)が適用され、正社員などと同様の権利が認められます。

事業主として、短期・単発の人材を使う際にも、法令を軽視せず、正しい労務管理を行うことで、労働者の保護と会社のリスク回避の両立が求められています。