近年、いわゆる「スポットワーク」(短時間・単発の就労)が、雇用仲介アプリなどを通じて広く普及し、労働者および企業の双方にとって利便性が高まっています。今回は使用者(事業主)側が気を付けるべき注意点についてまとめておきます。
1.労働契約締結時の注意点
「誰と誰が労働契約を締結するか」を明確にする必要があります。仲介アプリを通じたマッチングであっても、スポットワーカーとあなたの会社との間で直接「雇用契約」が成立します。契約成立の時期については、アプリで求人に応募しマッチングが成立した場合、面接などを経なくても「応募した時点で労使の合意があった」とみなされ、雇用契約が成立するのが一般的です。
労働条件(就業場所、仕事内容、労働時間、賃金、雇用形態など)は、書面(または同等の明示方法)で明示することが必要です。法令どおり、契約内容をあらかじめ明らかにする必要があります。
2.休業・キャンセル時の対応
たとえスポットワークであっても、契約成立後に事業主の都合で「仕事の中止」「勤務日のキャンセル」「早上がり」を命じた場合、これは原則として「使用者の責に帰すべき休業」に該当し、休業手当を支払う必要があります。
特に、直前でのキャンセルは、労働者にとって再び別の就労先を探す余裕がない可能性もあるため、不当な契約解除とみなされるおそれがあります。よって、キャンセルの可能性やその期限をあらかじめ示す場合でも、慎重に対応すべきでしょう。
3.賃金および労働時間の管理
業務に必要な「準備時間」(制服への着替え、業務前準備など)や「後片付け時間」なども、労働時間に含まれる可能性があります。したがって、これらを含めた実労働時間を正しく把握し、適切に賃金を支払う必要があります。
予定された労働時間と実際の労働時間が異なる場合には、予定どおりの賃金は遅滞なく支払い、差異が生じた分は適切に精算しなければなりません。
また、一方的な賃金の減額や不当な扱いは、法令違反となる恐れがあるため、労働条件の変更には労使双方の合意が必要です。
4.労災・安全管理・ハラスメントへの配慮
スポットワーカーであっても、通勤途中や勤務中の事故は原則として労災保険の対象になります。事業主として、安全管理や労災対策を講じる義務があります。
また、職場でのハラスメント対策(パワハラ、セクハラ、マタハラなど)についても、通常の雇用者と同様に配慮しなければなりません。
単発・短時間の「スポットワーク」であっても、契約成立時点で法令(労働基準法など)が適用され、正社員などと同様の権利が認められます。
事業主として、短期・単発の人材を使う際にも、法令を軽視せず、正しい労務管理を行うことで、労働者の保護と会社のリスク回避の両立が求められています。