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採用時のトラブル

学歴・職歴を偽って入社してきたとき

転職に対するイメージも様変わりし、

会社としても他社での実戦経験を持つ即戦力となり得る人材に期待して中途採用を積極的に行うようになっています。

 

中途採用の場合、前職での担当業務などの経歴は重要な選考資料となりますが、

職歴に詐称があった場合は選考結果に大きな影響を与え、結果的に会社が希望する人材を採り損なうことにもなりかねません。


また、その結果採用された人物が約束した結果を出してくれればまだ良いですが、

必要な能力・経験を擁していなかった場合はその後の処遇にも頭を悩めることとなります。

ですから、履歴書で確認することはもちろんですが、

面接の中で具体的な経験業務やある程度突っ込んだ技術的な話なども聞き出しながら、書面上の経歴の真偽の確認を行っていくことが必要になります。

しかし、採用後に詐称の事実が発覚した場合、詐称した事実そのものに嫌悪感を覚え、

その人物に不信感を抱くようになり、場合によっては辞めてもらいたいと思うこともあるでしょうが、そう簡単にはいきません。

解雇が認められるためにはいくつかの要件があります。

 

例えば、法令に抵触するような若年齢者や逆に定年年齢をまたぐ様な年齢の詐称の場合は別ですが、

一般に年齢を一つ、二つ誤魔化していたからといって即解雇することはできません。

また、健康状態の申告欄で高血圧など、持病があることを隠していたような場合も同様です。
これらは実際の業務遂行にどの程度支障があるか、という基準に照らして、解雇が相当するものとは判断できないからです。

ただ、詐称した内容が業務遂行能力に直結するような場合で、

かつ専門技術を要する職種の場合は重大な契約違反となり、即時解雇の理由ともなってきます。

たとえばトラックの運転の仕事で採用したにもかかわらず、無免許であった場合などがそれにあたります。

 

また、管理職として中途採用された場合も、一般職とは違い、最初から相当の社内的ポジションを与え、

それにふさわしい処遇で迎えているわけですから、詐称について一般職採用者に比して厳しい判断を下すことが可能となりますが、これも当然のことと言えましょう。

ただ、どのケースであっても処遇の変更や解雇を実施するに当たっては、

就業規則などにその基準、手順が盛り込まれていることが大前提となります。

 

内定者が入社前研修中にケガをした

採用内定者全員を対象に、業務知識を身につけるための入社前研修を行っている会社は多いと思いますが、

もしこの研修中に採用内定者が怪我をした場合、労災扱いとなるのでしょうか?

内定者の入社前研修中の事故が労災となるかどうかを考える場合、

まず研修参加者に労働者性があるかどうかが問題となります。

 

労働者性があるかどうかは、

  • 労務の提供がなされているかどうか
  • 労務の提供に対する報酬が支払われているか

どうかによって判断されます。

 

当該研修が業務知識を身につけさせることを目的としたものであり、

また、参加は義務づけられていることが多いと考えられます。

この場合、研修中労務の提供がなされており、賃金の支払いが必要です。

したがって、当該研修への参加者には労働者性があると解されます。

 

次に、労災保険が適用されるためには、次の二点を満たすことが必要です。

  • 労働者が災害発生時に使用者の指揮監督下におかれていること(業務遂行性)
  • 研修と災害との間に相当の因果関係があること(業務起因性)

例えば、研修終了後の自由時間に事故に遭った場合は、業務遂行性、業務起因性ともに認められませんが、

担当者の後について工場を見学して回っている最中に階段を踏み外したり、実際に簡単な機械の操作をしているときに、

誤って機械に手をはさんでしまった場合などは、この二つの要件を満たすものと考えられます。

 

したがって、当該研修中に発生した事故に、業務遂行性と業務起因性の両方が認められれば、

労災保険から給付を受けることができるでしょう。
なお、上記のような研修への参加の往復の時間は通勤に準じたものと考えられますので、

その途上で災害に遭った場合には、指定された径路を途中で逸脱していない限り、通勤災害として扱われることになります。