社員が秘密事項を漏洩したまず、在職中の社員に対しては、就業規則に機密事項に関する守秘義務の定めと守秘義務に違反したときは
懲戒処分にする旨の規定がある場合には、実際に機密を漏洩した社員を懲戒処分することができます。
しかし、退職後の守秘義務については微妙な問題を含んでいます。
なぜなら、在職中に身につけた技術やノウハウのすべてに守秘義務を強制しますと、
労働者は職業生活で身に付けた知識、経験、技能、人脈等を生かして転職をすることが不可能となり、職業選択の自由、営業の自由を不当に侵されることになるからです。
しかし、一方では、企業にはさまざまなノウハウや顧客情報、開発中の製品情報等の営業秘密が存在していますので、
企業独自のノウハウや技術等については一定の範囲で退職後も守秘義務を課すことがみとめられるものと考えられます。
対策として、まずは社員と個々に退職後も含めた『秘密保持契約』を締結します。
これを行うことで事後に漏洩行為に対し、漏洩を客観的に立証した上で、債務不履行による損害賠償請求ができるようになります。
ただ、この漏洩したデータが『不正競争防止法』に規定する要件に該当するものでなければなりません。
要件は以下の通りです。
上記の要件に該当し、漏洩事実を客観的に立証できれば損害賠償請求ができることになります。
退職後に懲戒事由が発覚した場合
在職中に懲戒処分を受けたときに、それが解雇に相当する重大なものであれば、
退職金規定の定めに則って退職金が減額され、または不支給となることはよくあります。
しかし、退職後に同様の非行が発覚した場合は、遡って懲戒解雇扱いにするというような処分をすることはできません。
通常は支払った退職金について返還を求めることができず、非行によって被った損害の賠償を求めて提訴するしかありません。
ただ、退職金規程中に、退職後に在職中の懲戒解雇処分に相当する非行が発覚した場合は退職金は支給せず、
支給が済んでいる場合にはその退職金を返還させる、との文言を入れておく事で返還請求を法的根拠を持って行うことができるようになります。
退職直前の有給休暇の消化
有給休暇を消化して退職しようと思い、退職願と有給休暇の申請書を一緒に会社に提出しても、
有給休暇が認められずに、欠勤扱いとされてしまう場合が多くあります。
これについて会社は、原則として有給休暇を認めなければなりません。
年次有給休暇は一定の要件を満たすことにより、当然に発生するものです。
また、有給休暇をいつ請求するか、どのように使うかは原則として労働者の自由です。
これに対して、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合には、
会社は他の時季に有給休暇を与えることができるとしています。
このような事例の場合、現実的問題として社員は有給休暇消化後にすぐに退職をするのですから、
他の時季に有給休暇を与えるということもできません。
結果として、社員の年次有給休暇を認めるしかありません。
有給休暇請求の例外として、有給休暇を争議行為に利用する場合などは、
会社はこれを拒否することができますが、一般的に退職前ではこれも考えにくいと思われます。
退職後も社宅から出て行ってくれない
社宅を持つ多くの会社では『社宅管理規程』を整備して、
入居の際に『社宅使用契約書』や『社宅使用にかかる誓約書』などを本人から取り付けます。
これらの書面上でなるべく詳細な取り決めをしておくことがトラブル防止の観点からも重要ですが、
社宅明け渡しまでの猶予についての一般的期間を以下に示します。
[自己都合退職の場合]
1か月以内としている場合が多い
[定年退職]
1週間〜10日程度
[死亡退職]
遺族の事情に配慮して1〜2か月程度
[解雇]
本人にとっては突然の話であるため1〜3月程度社宅入居の時点で、
従業員が社宅を出るに当たって色々な理由が考えられますからケースによって異なります。
ですが、本人の意思による退職であるならば、
この申し出の時点で社宅の明け渡し時期についても事前に確認してなるべく事務的に処理し、
退去が行われない場合は会社側で撤去を行う点についても合意を取り付けておくようにしましょう。
従業員本人と連絡が取れない場合は家族や身元引受人と相談して処理していくこととなります。
それでも埒が明かない場合は、最終的に明渡請求訴訟を提起することになります。
退職日をいつにすれば良いか
「退職願は退職の1ヶ月前でないと認めない」という会社は結構多いのではないでしょうか。
しかし、退職願を提出して2週間を経過したときに雇用契約は終了します。
雇用期間の定めのない契約の場合、労働者はいつでも退職の申し出を行うことができ、
退職の申し出の後、2週間を経過したときに雇用契約は終了するとされています。
ですから、退職希望日まで2週間以上あれば、会社のルールとは関係なく、退職希望日に退職することができます。